東京都で義肢や装具、車いす、リハビリテーション器具の製造・販売を行うお客様より、以下のご相談がありました。
・有機溶剤を含む接着剤を塗布する際の排気装置について、現在2台設置してあるが2倍のものに変更したい。

有機溶剤や特定化学物質、粉じんを扱う作業では業務に従事する方々を守る装置があり、それらは局所排気装置と呼ばれます。
局所排気装置は労働安全衛生法に基づき設置することが義務付けられており、設置には事前に労働基準監督署への申請が必要です。

今回のお客様も局所排気装置は既に2台設置されていましたが、作業量の増加に伴い既存のものでは能力不足になったため2倍の大きさのものに変更したいとご要望がありました。
また、局所排気装置の吸い込み口であるフードが大きくなると必要な風量も増えるため、既存のファンで能力が足りるようであれば流用したい、足りないようであれば必要風量を確保できる設計をしてほしいとのお話もありました。

課題解決の提案

今回の施工では局所排気装置のフードの開口寸法が既存のものの2倍になるため、必要な風量は単純に2倍になります。
事前に調査を行ったところ、既存の装置に使われている排風機は静音型キャビネットファンという消音ボックス付送風機でした。
高静圧、低消費電力かつ低騒音というものでしたが、静圧-風量特性曲線を確認すると改造しても能力アップは見込めないことが分かりました。

検証の結果、風量とともに静圧不足のため既存の排風機を撤去し、さほど高い圧力を必要とせず比較的低回転のため騒音が小さいシロッコファンを新規で屋上に設置することとしました。

新たに設置した局所排気装置はこちらです。
お客様のご要望に合わせて弊社で製作し、先方で組み立て作業を行いました。
局所排気工事局所排気工事

特徴としては以下の点があげられます。
・上面、側面部分を透明板にすることで採光性を確保
・透明板の素材は価格が安価で柔らかく傷が付きにくいという特徴があり、加工もしやすいことからペット透明板を採用(【写真2】赤斜線部分と上面部分)
・底面をアルミ複合板の白で作成したため明るく作業がしやすい
・開口手元部分に透明板を設置し、局所排気フード内からの器具および溶剤の落下防止対策
 (透明版の淵にはゴムカバーを取り付け、作業時に怪我をしないように配慮)
・背面は亜鉛鉄板にパンチングメタルを固定、開口率を計算し風速が均一になるよう工夫

また、お客様が以前使用されていた局所排気装置は捕捉面の幅が840mmでしたが、今回弊社が製作した局所排気装置の幅は1680mmです。
生産数の増加に伴い、作業効率向上のために2人で作業できるようにしてほしいとのご要望に応えて倍の大きさとしました。

<局所排気装置 捕捉面の幅 比較図>
局所排気工事フード図

施工風景写真

<組み立て作業風景>
局所排気工事

局所排気工事


↑局所排気装置から排気するためのダクトはショートアンカーで天井に固定しました。
ショートアンカーは地震でも外れにくく、落下防止策として適切との判断から選択しました。

局所排気工事局所排気工事


↑シロッコファンを設置する屋上は休憩所も兼ねているため、ファンをフェンスの外に設置しダクトの先端を右向きに固定することで直接排気が当たらないように工夫しました。

施工の際に気を使った点

局所排気工事作業は土日に行いましたが、お客様側も通常どおり作業を行っているため日程ごとに作業するスペースを入念に相談・確認し、双方の作業に支障のないよう工事進行を行いました。
さらに施工するにあたって、床だけでなく作業場所が2階のためエレベーターから屋外までをブルーシートで養生し、細心の注意を払って施工しました。

施工後のお客様の声

弊社ではお客様のご要望に合わせて局所排気装置の製作を行っております。
作業エリアを見ながら作業者にもヒアリングを行い提案する手法を採用することで、設備のミスマッチを極力避け、最適な装置を提供できるよう努めています。

施工後、お客様からは「局所排気装置の幅が広く、透明板で上面・側面を囲ったことで作業性と視認性が向上しただけでなく、屋内から排風機が無くなったことで作業場の騒音環境が改善されました」と感謝のお言葉をいただきました。