この度、株式会社あしぎん総合研究所(以下あしぎん総研)が発行する『あしぎん経済月報 4月号』(2022年4月発刊)の「さすてなぶる」に、田崎設備株式会社が紹介されました。

さすてなぶる とは

『さすてなぶる(=サステナブル):「持続可能性」という意味。
サステナブルという言葉には、単に維持・持続できるということだけでなく、次世代に向けた発展を追求し続けるという意味合いが含まれている。
本項では、あしぎん総合研究所の会員企業の中から、毎月1社訪問インタビューさせていただき、その企業の特徴や強み、今後の課題等を紹介させていただくコーナーである。』
(本文脚注より抜粋)


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あしぎん経済月報4月号







田崎設備株式会社


代表取締役 田崎利也
代表取締役 田崎 利也 氏
工場や作業所では、労働者の安全確保や働きやすさのために空調設備が重要である。当社は取引先の数多くの要望を施工経験に基づいた優れた技術で実現し、確固たる信頼を築いてきた。年商は直近の10年で5倍と急成長を遂げている。代表者に成長の鍵をお聞きした。


産業用冷凍空調設備業界で提案力とニッチ分野技術に強みを持っている。

事業内容について教えてください。
田崎社長 当社は工場や物流施設などの産業用空調設備や冷凍冷蔵設備をメインに受注しています。一般的に空調というと人が過ごしやすい空間をつくるためのエアコンを思い浮かべる人が多いですが、私たちの担う空調設備とは、人のみならず、製品に向けた空調も含まれます。取引先一つひとつのニーズや現場環境に応じ、調査、仕様の提案、設計、自社組み立て、設備工事を一体的に行うオーダーメイド型空調設備です。例えば最近の施工で海外の種子メーカーの設備がありました。小分けした種子の保管庫は、温度5℃で湿度は15%の状態を維持しなければなりません。通常の除湿機能を持つ空調設備では難しく、試験データを積み重ね、当社で組み立てた空調機と当社独自の施工技術が必要でした。このようにお客様が求めている状況を正しく理解し、必要なスペックを持つ空調設備を提案していく。これが当社のコア事業分野です。
 加えて、業界的にはニッチな分野ですが、作業者を有害物質から守る「局所排気装置」*1や、危険物製造所や危険物倉庫を空調する「防爆エアコン」*2について数多くの施工経験に基づき高い技術力を蓄積してきました。
 更に新しい分野としては薄型の「プッシュプル型換気システム」*3の新型開発と施工に取り組んでいます。今後の実績拡大が見込める分野と考えています。
 また、空調や冷凍冷蔵設備の保守点検メンテナンスや洗浄作業も請け負っており、既存の取引先はもちろん保守点検を切り口として新規先を積極的に開拓しています。

防爆エアコン施工例
防爆エアコン施工例


プッシュプル型換気システム
プッシュプル型換気システム

新鮮な食料品や総菜を提供できるお店づくりに貢献したいとの父の創業時の思い。

創業からの歩みを教えてください。
田崎社長 創業者の父健行(たけゆき)は、もともと福島県で設備関連の仕事をしていましたが、40歳の時、生まれ故郷の宇都宮に戻りました。1975年(昭和50年)に当社を設立し、人脈や資金も十分にない中で父が選んだ設備は「冷凍機」でした。フロンガスで冷やす冷凍機やショーケースが次々に開発され、市場や街の食料品店に急速に普及していた時期でした。父は新鮮な食料品や総菜が提供できるお店に人が集まってくる。そのための店づくりを提供しようとの信念を持ち続け、経営コンサルタントやパンの営業マンと協力体制を取り、次々に売れる小売店の誕生に協力していきました。
 ところが、1980年代に入ると取引先が減り始めました。大手コンビニエンスストアの台頭です。個人の酒店などは次々にコンビニに業態を変えていきました。そんな父の状況を見ていた私は、高校時代は家業を継ぐつもりはなく、大学も法学部に進みました。卒業後は商社に入ろうと考えていました。
 ところが、大学在学中に父が脳梗塞で倒れました。父の容態を考えると自分がやるしかないと決断し、卒業後は2年間電気工事会社で修業の後1987年(昭和62年)に当社に入りました。電気工事の経験があるものの現場での設備工事の経験は少なく、最初の頃は苦労の連続でした。設備機器メーカーの研修に参加したり、関連の本を数多く読んで勉強しました。本当に使える知識を習得するのは難しいことです。取引先に日本酒や味噌の蔵元がありますが、発酵工程が非常に大切ですからどのタイミングでどこまで冷やすか(温度管理)が非常に重要になってきます。そのような実際に生かせる知識を得るために、取引先との対話を重視することを心掛けました。
 1998年(平成10年)に父が亡くなり代表者を継ぎました。亡くなる前に父とは、これまでの小売店主体から食品工場との取引を中心にしていくことで合意していましたが、継いだ後はしばらく保守的な経営を行ったこともあり売上に大きな伸びはありませんでした。

自分たちの強みと取り組むべき分野を明確にする経営に舵を切った。

その後大きな転機があったそうですね。
田崎社長 風向きが変わり出したのは、一般建築まで広げていた店舗工事の請負を縮小し、産業用冷凍空調設備に特化し、重点的に「局所排気装置」に取り組みだした2014年(平成26年)頃からです。並行して取り組んでいたホームページ強化による受注増加への取組みと相俟って引き合いが増加しました。先ず、「局所排気装置」「防爆エアコン」といったワードに関してはSEO対策*4を実施し、施工例として閲覧いただく部分は実際に担当する技術者が悩んだり困ったりした時に参考にできる内容としました。お取引先にご協力いただき、可能な限り工事内容やプロセス、工夫点、解決できた課題を盛り込んだ内容としたのです。施工例の具体的表示により、自分たちの問題解決につながるのではないかと考えた技術者からの電話やメールが急増しました。
 それまでは食品関連業種が大半でしたが、フィルム等素材メーカー、接着作業の会社、危険物を扱う会社等、多種多様な会社からの問い合わせが増えていきました。また、会社の周辺だけでなく、北九州、愛知や大阪等工業都市と言われるところからの照会が増えました。それは逆にいうと各地域に施工できる業者が少ないということだと思っています。
 加えて強みにしたのが、消防署と労働基準監督署への申請時の説明力と交渉力です。空調設備は労働者の安全確保に深く関係しているので、官庁側も許認可判断に慎重になります。特に爆発を防ぎながら空調を行う「防爆エアコン」については、施工例が少ないこともありデータや資料を揃えていくのが大変です。関係官庁との難しい交渉になりますが、当社に蓄積された経験値をフルに活用し取引先の依頼を実現化することで信頼につなげています。
 工事の問い合わせをいただいた方には丁寧に対応しています。できれば課題を持っている方々全てにお応えしたいと考えていますが、知見の少ない専門外の工事を打診された場合は、良いパフォーマンスが実現できないのならお客様のためにはお断りする方が良いこともあると思っています。当社が取り組むべき分野は現状ではオーダーメイド型の空調・冷凍冷蔵設備と考えています。
 このような取組みにより取引先に満足いただき、ここ10年で売上を5倍に伸ばすことができ、直近期では経常利益は最高を計上することができました。

小さな会社だからこそ経営ビジョンを明確にして全員で取り組む。

会社の運営でどんなところに工夫をされていますか。
田崎社長 10年前から決算期に合わせて年度の経営計画書を策定し、社内に加え外部ステークホルダーにも見ていただいています。部毎の方針や計画はそれぞれの責任者に考えてもらいますが、それ以外のところは全て自分でまとめています。主な内容としては、経営理念・ビジョン、経営戦略を考える上でのSWOT分析の結果、会社のリソースを重点配分する分野、中長期の数値計画、従業員に求める技術や管理能力のレベル感と必要なキャリア育成プラン等です。私たちの会社は総勢17名という小さな組織で若い人も多くいます。先ずは社内に発信し、全従業員と向かうベクトルや手段・方法を共有化し一枚岩になることが大切と考えています。その上で、取引先、協力会社、金融機関、各コンサルタント等の外部のステークホルダーに当社のことを理解してもらう資料として年度経営計画書を活用しています。説明会も毎年実施しており、今期(第48期)の説明会には68名の方に参加していただきました。
 社内のコミュニケーションは非常に良く、会社の強みになっていると思っています。ただ、今の若い人は自分の考えや気持ちを発信するのが苦手な傾向があるので、毎朝開催する朝礼をトレーニングの場にしています。朝礼には「職場の教養」を使い、「一日一話」の読み物を輪読します。司会はその都度指名し、意見発表者や感想を話す人もあらかじめ決めずに指名し、話してもらうようにしています。表現する訓練にもなりますし、いつ指名されるのか分からないので意見(当事者意識)を持って参加するようになります。経験の浅い社員へのOJTにも有効です。新規先受注が見込める場合、お客様との最初の接点は私がもちます。方向性を掴んだら、その後のメールのやり取りは担当に付く見込みの社員にCCで共有化します。訪問の際には担当を決め、一緒に訪問し、受注までのプロセスを共に経験します。共に成功体験をすることが大切です。失敗の経験がやがては必要になってきますが、これから育つ若手は、最初の何回かの成功体験が仕事を前向きに覚えるモチベーションになります。
 前期は前半が全くの不振でした。見込んでいた医療関連の受注が全くなかったからです。しかし、社内からは違う分野で受注を増やす意見や工夫が積極的に出てきました。後半のラスト4か月は、私の指示ではなく社員達の主体的な行動で売上と利益の最高値を計上することができました。これは全員の自信になりました。会社としての大きな成長を感じた期でもありました。

本社事務所前で社員全員と(2021年12月撮影)中央が田崎社長


既存分野で更なる成長をし、電気工事分野で新たな取組みをしていく。

今後の事業展開について教えてください。
田崎社長 今までは関東を中心とした近県の案件に対応していましたが、 昨年よりご紹介案件に限り、 沖縄県や離島を除く全国に提供しはじめました。 先ほど紹介した経営計画書で2030年の当社の姿を描いています。 それは空調のニッチ分野で当社のセールスエンジニアが全国で活躍することです。 また、 付加価値額(粗利益)については会社の活動自体から生み出された価値と考えていますので、 経営ビジョンでも重視しており、売上よりも大切にして伸ばしていきたいと考えています。
 電気工事の分野については、社内に技術や経験を蓄積し育てていきたい新たな事業分野です。 計装制御 (生産工程の測定、制御装置)や一次側電気工事 (電力会社から建物に電力を引き込む工事) は現在請け負っている設備分野と関連が強く、一体で受注できれば当社の発展にプラスになるものと考えています。
 現状の学校教育では、「設備」の学科はありませんが 「電気」の学科はあります。 当社に電気分野があれば学生も応募しやすくなり、採用にも有利になるのではと考えています。
 これからはSDGsに積極的に取り組む計画です。 省エネやCO2削減の見える化を徹底して、お客様のSDGs推進のお役に立つ取組みをしていきます。 日本のものづくり企業のインフラ整備に貢献できるよう社員たちと共にチャレンジしていきます。

以上



田崎社長(右) 足利銀行 宇都宮東ブロック八田統括支店長(左手前)
聞き手 あしぎん総合研究所 岡田上席研究員(左奥)

インタビュー風景

当社の次代を担う社員達
当社の次代を担う社員達

*1 局所排気装置

実験室や工場内で発生する有毒ガスや粉塵などが室内に拡散する前に発生源のそばに局所的な吸引気流を設けて外に排気する装置

*2 防爆エアコン

モーターなど電気部品から漏電したり、火花が出ないようにし、引火性の高い物質を取り扱う部屋での爆発を防ぐ対策を施した空調設備

*3 プッシュプル型換気システム

吹き出し用、吸い込み用2つのフードで有害物質を挟み込み換気する空調システム

*4 SEO対策 Search Engine Optimization

インターネット検索サイト上で自分のサイトが上位に表示されるような取組み