溶剤とは物質を溶かす性質を持つ液体を言います。
このうち有機物に由来するものが有機溶剤です。

基本的には「有機」は生物が作り出す化学物質、「無機」は鉱物のように生命活動をせずにある物質のことです。
端的には炭素・水素を含む化合物を有機化合物、それ以外は無機化合物となります。
必ずしも水に溶けないものを溶かすものとは限りません。
物を溶かすことを目的に用いられる液体の有機物は全て有機溶剤です。
塗料や接着剤をはじめ、普段の生活の場から産業界まであらゆる場で活用されています。

炭素・水素を含むことで可燃性もあり、ガソリンのように火を付けると燃える液体はほとんど有機物と考えられます。
生活に役立つ物ですが、人体に悪影響を及ぼすことのあるのも事実で「労働安全衛生法施行令」「有機溶剤中毒予防規則」が定められ、労働者の健康診断など管理を重視しています。



有機溶剤の種類については有機溶剤中毒予防規則で54種類を示しています。
構成をみるとアセトン、クロロホルムなどそれ自体が単体で存在するものと、ガソリンやエーテルのように多くの炭化水素による混合物があります。

それらの性質により、単一物質で有害性の強いものを「第1種有機溶剤」としています。
クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレンなど7種。

第1種以外の単体物を第2種としています。
アセトンやイソプチルアルコール、エチルアルコール、キシレン、クレゾールなど40種。

炭化水素の混合物が第3種でガソリンや石油エーテル、石油ナフサ、テレビン油など7種があります。

第1種有機溶剤
クロロホルム
四塩化炭素
1,2-ジクロルエタン(二塩化エチレン)
1,2-ジクロルエチレン(二塩化アセチレン)
1,1,2,2-テトラクロルエタン(四塩化アセチレン)
トリクロロエチレン
二硫化炭素
第2種有機溶剤
アセトン
イソブチルアルコール
イソプロピルアルコール(2-プロパノール)
イソペンチルアルコール(イソアミルアルコール)
エチルエーテル
エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ブチルセロソルブ)
エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)
エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)
オルト-ジクロルベンゼン
キシレン
クレゾール
クロルベンゼン
酢酸イソブチル
酢酸イソプロピル
酢酸イソペンチル(酢酸イソミアル)
酢酸エチル
酢酸ノルマル-ブチル
酢酸ノルマル-プロピル
酢酸ノルマル-ペンチル(酢酸ノルマル-アミル)
酢酸メチル
シクロヘキサノール
シクロヘキサノン
1,4-ジオキサン
ジクロルメタン(二塩化メチレン)
N,N-ジメチルホルムアミド
スチレン
テトラクロルエチレン(パークロルエチレン)
テトラヒドロフラン
1,1,1-トリクロルエタン
トルエン
ノルマルヘキサン
1-ブタノール
2-ブタノール
メタノール
メチルイソブチルケトン
メチルエチルケトン
メチルシクロヘキサノール
メチルシクロヘキサノン
メチル-ノルマル-ブチルケトン
第3種有機溶剤
ガソリン
コールタールナフサ
石油エーテル
石油ナフサ
石油ベンジン
テレビン油
ミネラルスピリット



労働安全衛生施行令では有機溶剤を使用しての労働災害を防止するために作業を管理するものとして、都道府県労働局長の免許を受けた者が行う有機溶剤作業責任者技能講習を修了した有機溶剤作業主任者が、労働省令で定める事項を守って作業等を進めることにしています。
守るべき労働安全衛生法は、労働災害防止計画、管理体制、労働者の危険または健康障害を防止するための措置などについて計画の届出などを詳細に述べています。
同法は順守義務を課しており、違反した場合は罰則を伴います。



有機溶剤は危険性を持つことから有機溶剤中毒予防規則では、有機溶剤の管理から処理、作業においての換気などの整備と、作業員を守る健康診断や保護具などを具体的に定めています。
また、作業の中心としての有機溶剤作業主任者技能講習を必須として明示しています。