有機溶剤は塗装や洗浄など多くの現場で欠かせない利便性の高い物質です。
しかし、揮発性が高く人体に有害な性質を持っており、不適切な取り扱いは急性中毒や長期的な健康障害、最悪の場合には死に至るリスクを伴います。
こうした労働災害を未然に防ぐため、労働安全衛生法および「有機溶剤中毒予防規則(有機則)」に基づき、現場の指揮官として「有機溶剤作業主任者」の選任が義務付けられています。
1.有機溶剤作業主任者の選任義務
事業者は屋内作業場やタンク内などの換気が不十分になりやすい場所で、特定の有機溶剤を製造または作業を行う場合、事業規模にかかわらず有機溶剤作業主任者を選任しなければなりません。
・選任の要件:都道府県労働局長等の登録を受けた機関が実施する「有機溶剤作業主任者技能講習」を修了した者の中から選任します。
・対象となる作業場所:屋内作業場、タック、船倉、坑の内部、その他厚生労働省令で定める場所が対象となります。
(参考)
・有機溶剤中毒予防規則 第4章「管理」 第19条の②
(https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-21-4-0.htm)
・労働安全衛生施行令 第6条 18項
(https://laws.e-gov.go.jp/law/347CO0000000318#Mp-At_6)
・労働安全衛生施行令 第22条 6項
(https://laws.e-gov.go.jp/law/347CO0000000318#Mp-At_22)
2.主な職務と役割
作業主任者は現場で作業を直接指揮し、技術面と危険性の両面から安全を徹底させる「現場の番人」です。
その業務は作業の開始から終了後まで多岐にわたります。
作業場の管理
・適切な表示:使用する有機溶剤の種類や人体に及ぼす作用、取り扱い上の注意事項を作業員に見える場所に提示します。
・設備の点検:局所排気装置や換気設備が正常に稼働しているか、定期的に点検を行います。
・容器の管理:使用後の空容器の適切な処分や、溶剤の漏洩防止を徹底します。
作業員の安全・健康管理
・作業方法の決定と指揮:労働災害を防止するための適切な作業手順を決定し、作業員を直接指揮します。
・保護具の使用確認:防毒マスクや送気マスク、保護手袋などの防御用具が正しく使用されているか監視します。
・健康状態の観察:有機溶剤の毒性による体調変化(めまい、頭痛、吐き気など)がないか、作業員の様子に常時目を配ります。
3.【重要】法改正に伴う新たな体制
令和7(2025)年より段階的に施行される労働安全衛生法の改正により、化学物質を取り扱う事業場では「化学物質管理者」の選任が義務化されました。
・化学物質管理者:事業場全体の化学物質管理の「戦略・方針」を決定する司令塔
・有機溶剤作業主任者:決定された方針をもとに、特定の現場で「実務・監視」を行う指揮官
これからはこの両者が連携して「自律的な管理」を行うことが法律によって強く求められます。
詳細な違いについては以下のリンクをご参照ください。
4.資格の取得について
有機溶剤作業主任者になるためには、主に都道府県単位で実施される「有機溶剤作業主任者技能講習」(2日間)を修了する必要があります。
講習では健康障害の知識、作業環境の改善方法、保護具の知識、関係法令などを学びます。
現場の安全を守ることは労働者の命を守ることと同義です。
正しい知識に基づいた選任と管理を徹底しましょう。

